子どもが文字や数字の学習に興味を示さず、教育のジレンマを感じることは珍しくありません。勉強用のノートを手に入れても、子どもの関心がすぐに薄れてしまう、継続性が保てないという問題に直面した経験は、多くの保護者にとって共通の悩みかもしれません。
子どもが「これは楽しい!」と実感しながら字や数を学べる秘訣を、現場で活躍する保育の専門家であり、二人の子供の母でもある筆者が紹介します。
子どもたちが自発的に文字と親しむきっかけをつくり、数字に関心を抱くような環境づくりを、一緒に試行しませんか。
ひらがなとカタカナの学習法
お子様が教育の新たなステップに進むためには、ひらがなとカタカナを親しむことが重要です。文字の読み書きが得意なお子様もいらっしゃるかと思いますが、苦手なお子様もこの機会に挑戦してみると良いでしょう。
読書練習のための遊び心を取り入れた方法
読書の習慣付けに役立つ、親子で楽しむための練習法として、絵本を活用した文字さがしや、文字カードを使ってのクイズ遊びが有効です。家庭にある絵本を使い、共に読み進める中で特定の文字を見つける遊びをすることで、子どもに文字に対する関心を持たせることができます。また、文字の形に慣れ親しむために、大きな文字と短い文章が特徴の絵本を選ぶと良いでしょう。
文字カードを用いた場合は、既に認識している文字を基にして単語を構築し、「これはどう読むの?」と質問形式で楽しく学べます。子ども自身に文字カードを組み合わせて質問を作らせることも一つの手です。取り組む際には、子どもが得意とする文字から始めて自信を付け、読むことの楽しさを感じられるよう工夫をしましょう。
画数の少ない文字から始める書き方トレーニング
文字の書き方の練習を始める際には、「し」や「つ」のように画数が少ないものから取り組むのがおススメです。
選択肢として練習帳の活用も良いでしょう。購入の際には、子どもと共に本屋へ足を運び、気に入った練習帳を選ばせることが大切です。自分で選んだものには愛着が生まれ、その結果書くことへの意欲が高まります。
また、書くことに苦手意識を持つ子どものためには、迷路ゲームでの線引き練習が有効です。これは楽しみながら字への慣れ親しみを育むことができます。
書く技術が身に付いてきたら、自分自身や家族の名前を書くことや、「友達に手紙を書く」といったモチベーションが上がるような活動を提案しましょう。
忙しい保護者の方々や、他の小さな子どもを抱えている方々には、タブレットを使用した学習アプリが推薦されます。子どもたちが一人でもゲーム感覚で取り組むことが可能です。
数値の認識と基本計算のトレーニング
計算の練習に取りかかる前に、日々の生活で機会を見つけて数値への理解を軽くテストしましょう。直接的に「この数字は?」と数値を尋ねるのではなく、普段の生活の流れの中で数字を利用するアプローチを取り入れます。例えばスナックタイムに数字を示しながら「この数量のおやつを取ってきて」と提案することで、「数値」とそれが指す「実際の量」との一致を確かめるのです。
子供が順調に数を数えることができるようになったら、基礎的な計算に挑戦させてみるのが良いでしょう。
家庭内での楽しい計算の遊び方
かつては地域の小さな菓子店では計算の練習が自然と身についていましたが、現在は税込価格になるとその計算が複雑になりがちです。そこで、自宅で子ども達が計算を楽しめるよう、「駄菓子屋さんごっこ」という遊びを取り入れてみませんか?
この遊びでは、駄菓子に10円や20円など、計算がしやすいように価格を設定してください。そうすることでお子さんが単独で計算の練習をして、実際に買い物をする状況を作り出せます。
駄菓子は必ずしも用意する必要はありません。家にあるお菓子などで代用することもできます。
計算が得意なお子さんの場合は、お金を含む財布を使用しても問題ないでしょう。しかし計算が苦手な子には、「卵パック財布」を使うことを推奨します。卵パックには10個のスペースがあり、10円玉を一枚ずつ配置できるため、使うごとに取り出して視覚的に計算がしやすくなります。
ただし、卵パックの端は尖っていて危険なため、取り扱いには注意が必要です。安全のためにも、パックの端を丸くするためにテープでしっかりと保護するようにしてください。
家庭でのスナックタイムを効率化する小技
日々の忙しさの中で、おやつのやり取りに頭を悩ますことはありませんか?時間を有効に使いたいなら、予めスナックに価格のタグを付けておくと良いでしょう。
スナックを収納した箱をテーブルに置き、「100円分好きなものを選んでね」とお子様に伝えます。あとは彼らが自分で選んだスナックを持って来るだけです。忙しい時でもこれで一息つけますね。
次には、子供が選んだスナックの合計金額が100円になっているかを見てみましょう。もし計算がずれていたら、それを修正する必要はありますが、その際は足し算や引き算の練習と捉えて前向きに対処しましょう。
お子様が計算に慣れてきたら、価格設定にバリエーションを持たせて工夫してみてはいかがでしょうか?例えば、大きなスナックには高価な値札を付けたり、購入金額を増やしたり、15円などの細かな金額設定にしてみることで、楽しみながら学習できます。
時間に余裕がある時に大量に価格タグを用意しておけば、おやつの直前にさっと準備することも可能です。これならスナックタイムもスムーズに、そして教育的なものに変えることができますよ。
練習帳やデジタルツールの利用をお勧めします
ひらがなを習得するときと同じように、数字の書き取りにも実際に書くことによる練習が重要です。
練習帳での学習では、いきなり計算問題に挑戦するのではなく、最初は数字を丁寧に書くことにより承認を得る経験を積み重ねるところから開始しましょう。
その後、簡単な数のカウントなどの問題に進み、解決できる喜びを感じながら自信を育むことが肝心です。
初めに複雑な問題に直面すると、間違えることが多くなり、分からないために面白くないと感じたり、結果として数字に対する関心が低下します。
お子様が「楽しい!」と感じられるような方法で、学びを持続させましょう。
アプリケーションを活用すればゲーム感覚で続けられ、次々と挑戦できる問題が与えられるため、お子様の興味を引きやすくなります。
ぜひお子様の好みに合わせて、様々な学習スタイルを試してみてください。
時計の読み取り方の重要性
時刻の把握の仕方を身につけることは、小学生の生活におきましては、休憩までの時間や課題完了の期限などを見積ることで、子どもたちに安心感をもたらし、心にもゆとりを提供します。
時計を完全に理解していなくても心配は無用ですが、学校教育による形式的な時計学習よりも事前に「時間」という観念に精通している方が、子どもはよりスムーズにそれを受け入れることが可能になります。
時間感覚の育成を始めよう
時間を覚える手始めに、お子様には「長い針が特定の位置に来たらお片付けの時間だよ」と時刻と行動をリンクさせる方がいらっしゃることでしょう。そこでさらに、「長い針があるポイントに達し、同時に〇時を迎えたら」と具体的な時刻を追加することをお勧めします。
これは「数字」としてではなく、「時刻」として時計の針を見る視点のシフトを助けるための工夫です。確かに、時計の読み取りは初等教育の段階で学ぶ内容ですが、学校教育に向けた事前学習として、時計の針の位置から「このときは〇時」と判断する練習を積むことが重要です。
「長針が12の上にあると〇時」といったシンプルな方法から教えていくと良いでしょう。
子どもと共に時計製作体験
ご家庭で子供と共同で時計制作を試してはいかがでしょうか。土台にはダンボールや厚みのある紙、紙皿などが有効活用できます。色とりどりのマーカーで数字を描き入れ、内部に芯がある素材を使用して時計の指針を作成しましょう。使用するモールは折り曲げて活用すること、また針となる部分の長さを違えることが重要です。これによって、長い針と短い針を区別します。モールを土台の真ん中に取り付ければ、あっという間に完成です。
もし手間を厭わないのであれば、モールの代わりに厚紙を切り出して指針を作り、土台中央部に小さな穴をあけて割ピン(両端を広げて固定できる、文房具店や100円ショップでも入手可能な金具)を通しての時計制作も、より実用的でお勧めです。
文字盤を作成する作業において、数字の間隔などが自ずと身に付きます。時計が完成したら、指定した時間に針を合わせる遊びをしてみましょう。たとえば、「昼飯は12時だから、針を12時に合わせてごらん」というように行動を通して学ぶのです。
このようにして時計に触れ、時間への意識を高めるチャンスを多く設けることをお勧めします。
時計を使ったストーリーテリングでの学習
ご家庭のお子様が興味を持つキャラクターを取り入れた物語を考え出して、例えば「くまさんが午後3時にスナックタイムを楽しむ」といった明瞭なエピソードを設けます。「その時刻になるとどんなことが起こるのか」を想像力を働かせながら、物語と同調して時計の長針や短針を指し示してみましょう。この方法によって、時刻と出来事が結びつき、子供たちにとって時間の概念を捉えやすくすることができます。
アプリによる時計の学び方
度重なる紹介になりますが、学習アプリがお気に入りです(笑)。ゲームに依存していると感じるかもしれませんが、大事なのは「子供が喜ぶかどうか」だと思っています。
もし長時間画面と向き合うことが心配であれば、ここでも時間配分をうまく行い、決められた時間内でのプレイをおすすめします。
こうしたアプリは、時計を読むスキルを向上させる楽しいゲームやクイズでいっぱいです。
子供たちが自分から喜んで挑むことで、学習への効果もぐっと上がることでしょう。
読解力で豊かな想像力と表現力を
読解力はただのスキルというだけではありません、想像力の扉を開く鍵です。
文字が織りなすストーリーを通じて、お子さんの心に読解力の種をまき、知識の花を咲かせましょう。
絵本の読み聞かせで豊かな読解力を
絵本は、子どもたちの読解力の向上に寄与する重要なツールです。そうした中で、登場人物になりきって親子で行う「生き生きとした読み聞かせ」を体験してみてはいかがでしょうか?
親子がそれぞれ登場人物を割り当てて担当し、感情を込めて朗読をすることで、物語に深みを持たせることができます。挿絵と物語のシーンを照らし合わせながら、「登場人物の今の気持ちは何だろう」「この台詞はどのように発するのが適切か」といった点を共に探求し、楽しみながらも深い理解を目指しましょう。
このようにして物語の登場人物の感情や背景を把握することで、言葉の持つ意味を直感的に掴み取る力が育まれます。絵本を通して物語の世界を共有することは、読むことの歓びをより直接的に感じさせてくれるでしょう。
独自の物語の創造
子供たちの創造力を養うために、彼らだけのオリジナル物語を創作してはどうでしょうか?
子供自身が思い描くキャラクターや冒険のストーリーを紙にスケッチし、オリジナルの絵本を作成するのです。
このプロセスは、語彙の理解を深め、想像した内容を言語化するスキルを養う素晴らしい方法です。
加えて、自ら創作した物語を読むことで、読書に対する自信や喜びが身につきます。
最初は大人が手助けすることで円滑に進めることができますが、創作の醍醐味を一度知り、一連の流れをマスターすれば、次第に子供自身に全てを作らせてみるのが良いでしょう。
言葉のパズル遊び
楽しみながら言葉のスキルを向上させるパズルゲームもお試し下さい。
断片化された文を正しい順序で組み立てるゲームは、文脈理解能力を養います。
読解が困難な場合は、イラストと組み合わせて物語の筋を可視化する手法も役立ちます。
オリジナルの物語を創造する際、子どもたちは出来事が生じる順番を自ら推理します。
この活動により、事象の時系列を捉える能力が自然と身に付きます。
これこそが「物語のパズル」と呼ばれるもので、思考力を高める遊びとしても魅力的です。
大事なのは「楽しく」学ぶこと
一貫して伝えたいメッセージは、子供達が「楽しく」学習するという点に尽きます。子供たちが遊び心を持って学びの喜びを発見し、その充実感が将来的な学びの継続へと結びつくことが重要です。小学校の教室では授業が絶え間なく続き、時にはその圧力に子供たちが反発し、勉強を嫌がるかもしれません。
そうした状況にならないよう努め、学びは楽しいものであるという理念を子供たちに植え付けましょう。小学校での学習が待ち遠しい、楽しいものであるように彼らの心に期待感を育みましょう。